研究概要 |
我々は,関節リウマチ(RA)の発症に,グリオスタチン(GLS)(血小板由来血管内皮増殖因子と同一でthymidine phosphorylase活性をもつ)が密接に関与していることを初めて見いだした.thymidinephosphorylaseはin vivo, in vitroにおいて血管新生作用を有している.我々の研究グループでは,これまでの基礎研究成果に基づき,(1)RAにおける関節破壊へのGLSの関与を解明すること.(2)GLS遺伝子の発現から関節炎惹起活性の発現に至る諸相を阻害することにより,RA病勢を緩和する方法を確立することを最終目標としている.本研究ではRA滑膜炎増悪の一翼を担っている血管新生におけるGLS分子機構の解明を目標とした. 本年度は,RA人工膝関節置換術のさいに患者の承諾を得て採取した滑膜を培養し,3から9代継代し形態学的に均一な線維芽細胞様滑膜培養細胞(FLSs)を用いて,GLS刺激による血管新生などの遺伝子の発現プロファイルを検討した。RA患者の関節液中GLS濃度は平均300ng/mlである。この濃度でFLSsを刺激すると、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)の発現が誘導された。またRA滑膜組織を抗GLS抗体と、抗VEGF抗体を用いて免疫組織染色をしたところ、ともに滑膜表層細胞に強く発現していた。GLSとVEGFは協同作用にて、滑膜炎を増強していることが、示唆された。 また正常ウサギ膝関節にGLSを強制発現させ,関節炎発症機序,および骨軟骨の破壊機序を分析することを目的として、予備実験を行った。現在ウィルスベクターを使わないより安全なgene transfection法を模索しており、その一つとして,超音波を用いたmicrobubble gene transfectionの導入効率を検討した。実用的な条件設定が得られず、さらなる研究が必要である。
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