われわれはこれまでに椎間板ヘルニアのモデル動物としてL4、L5神経根をchromic gutで結さつするモデルを用いてきたが、より臨床的な病態に近いものとして、摘出した尾椎の髄核を神経根上に留置して疼痛を引き起こするモデルを作成し、神経因性疼痛に対するシクロオキシゲナーゼ2選択的阻害剤(セレコキシブ)の効果、およびセロトニン5-HT2A受容体選択的阻害剤(塩酸サルポグレラート)の効果を検討した。SDラット30匹に部分椎弓切除を行い、露出した左L4、5神経根上に切断尾椎より採取した髄核組織(4mg)を留置した。処置後のラットは術後7日目までに処置側後肢の痛覚過敏(アロディニア)を示すようになり、術後21日目までに正常に復した。セレコキシブ(5mg/kg)を術後4日目より3日間経口投与すると(n=10)、その後のアロディニアの程度は有意に抑制された。塩酸サルポグレラート(200mg/kg)を術後7日目より反復投与すると(n=15)、投与後5日目と8日目の測定でアロディニアは有意に抑制されていた。今回の実験により髄核留置による椎間板ヘルニアモデルの有用性が確認された。また、シクロオキシゲナーゼ2選択的阻害剤が神経因性疼痛の発症予防に有効である可能性および、抗血小板剤である5-HT_<2A>受容体拮抗薬が神経因性疼痛に対して有効である可能性が示された。今後、椎間板ヘルニアに対する最適な薬物治療の確立を目指し、同一実験系内で各種シクロオキシゲナーゼ選択的阻害剤、5-HT2A受容体選択的阻害剤の比較検討を行う予定である。
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