研究概要 |
外部環境の変化により生じる機械的刺激に対して,細胞が様々な応答を行うことにより,生体はその変化に適応してきた.このような生命の神秘を解明し,ティッシュエンジニアリングという最新の工学手技を利用して,治療に応用しようとするのが本研究の目的である.脚延長術は骨や筋肉・血管といった軟部組織を伸張して,組織を増殖・改変させる技術である.また延長仮骨が直接模様骨化形式をしめすことから,再現性のある骨化モデルとしての特徴を有していることを発見し,難治性の骨折治療から骨粗鬆症治療につながるさまざまの骨形成刺激実験,骨代謝実験を可能としてきた.その中で我々は最近,フリーラジカルが細胞のアポトーシスに関与していることを報告した.そこで骨形成に最も重要な働きをする骨芽細胞を対象に,骨延長時に加えられる牽引負荷という条件におけるフリーラジカル産生の有無をin vitroで検討することを第一の目的とした.骨・軟部組織の伸張に伴い、局所には種々の環境の変化が生じていることが想像される.たとえば,電解質濃度の変化に伴うpHや酸素分圧の変化などにあげられる.しかし,このような環境変化に対して細胞がどのような応答を行うかについては明らかにされていない.これまでの我々の基礎的研究により,脚延長局所においては,延長時に酸素分圧の低下が存在することが示唆されている.これとは別に,骨延長部の骨形成に先立ち血管の旺盛な進入が必須であることも明らかにした.新生血管を誘導する因子として,血管内皮細胞増殖因子(vascular endothelial growth factor, VEGF)が同定された.平成16年度は,骨芽細胞に機械的負荷を加え,フリーラジカルが産生されることを証明した.また,脚延長仮骨を模様骨化のin vivoのモデルとして使用し,活性酸素の誘導を組織化学的に証明した.以上の結果より,本研究は順調に進捗しているといえる.
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