研究概要 |
関節リウマチモデル動物の一つであるアジュバント関節炎ラットを作成し、視床下部ー下垂体-副腎軸での、ガラニン様ペプチド(GALP)遺伝子の発現動態を検討した。結核死菌をincomplete freud adjuvantでemulsion化し、complete freud adjuvantとしたものをラット尾根部に接種(1mg/0.1ml/匹)した。抗原接種から0,5,12,24時間、4,8,10,12,14,21日後に屠殺し、脳と関節および滑膜を取り出し-80℃に凍結保存した。脳はクリオスタットにて12μmの凍結薄切切片とし、視床下部の神経核(視索上核、室傍核、弓状核)を中心にRIラベリングによるin situハイブリダイゼーション法(ISH)を行った。関節および滑膜はテープトランスファー法による非脱灰切片用にセルロースコンパウンドに包埋した。体幹血は採取後、細胞成分を遠心分離し血漿を保存した。ISHの解析はフイルムオートラジオグラフィー法と画像解析装置にて行った。フイルムオートラジオグラフィー法に続いて、乳剤オートラジオグラフィー法にてmRNAを可視化した。また、同一スライド上で組織染色を行い、mRNAの発現細胞も同定した。その結果、視床下部においてGALP mRNAレベルは抗原摂取24時間後と15日後に増加する傾向であったが、有意な変化はなかった。シクロオキシジェネース阻害剤であるインドメタシンの経口投与も視床下部でのGALP mRNAレベルに影響しなかった。一方、下垂体後葉においては、抗原摂取12時間後と15日後にGALP mRNAレベルの著明な増加が認められ、インドメタシンの経口投与によりGALPの発現は有意に抑制された。視床下部においてGALPは主にニューロンに発現するが、正中隆起においては一部グリア細胞への発現が認められた。RIA法にて血漿中GALP濃度を計測したが、有意な変化は認められなかった。今後、視床下部-下垂体系におけるGALPの生理的意義および関節炎の発症・進展に関与する可能性を検討する。
|