研究概要 |
ARDSに対して酸素化を確保するためのPEEPの適用は必須となっているが、どのようなレベルのPEEPを適用すべきかその適応の方法は定まっていない。我々は急性呼吸不全のうち肺胞虚脱を主体とする病態(肺洗浄(LAV)によるサーファクタント欠乏肺)と肺胞浮腫を主体とする病態(オレイン酸(OA)肺傷害)とでPEEPの効果が異なると考え、それぞれのモデルで肺内及び血中IL-8にどのような影響をもたらすかを比較検討した。 【方法】28羽のウサギを気管切開の後、人工呼吸を開始し(TV8ml/kg, RR25,FIO_21.0)、OA群(0.1ml/kgのOAを30分かけて静脈内投与)、LAV群(30ml/kgの生食で肺洗浄)の2群に分けた。肺傷害完成(P/Fratio<200)30分後に圧容量曲線を描き、両群をさらにIPPV群とPEEP群に分けた。IPPV群ではTV12ml/kgで、OLA群では下屈曲点を1cmH2O上回るPEEPを用い、TV8-10ml/kgで換気を行った。治療開始後3時間観察を行い、血液ガスならびに血清IL-8を経時的に測定した。終了後再び圧容量曲線を測定し、気管気管支肺を一塊に摘出の上、右肺(気管支)を60mlの生食で気管支肺胞洗浄施行し、洗浄液(BALF)中の蛋白およびIL-8を測定した。左肺はHE染色で組織観察した。 【結果】LAV群、OA群ともにPEEP群ではPaO_2がIPPV群よりも高値を示した。LAV群ではPEEP群よりもIPPV群の方がBALF中IL-8が高値であった(11.4vs24.1ng/ml)。一方、OA群ではPEEP群とIPPV群との間にBALF中のIL-8に差を認めなかった(6.1vs8.7ng/ml)。血中IL-8、BALF蛋白/血清蛋白についてはLAV群OA群ともにPEEP群とIPPV群との間に有意差を認めなかった。組織学的にはOA群では肺胞の虚脱や無気肺は少なく、PEEPを加えた場合、過伸展や肺胞壁の破壊が著明となった。 【結語】肺胞虚脱が主体のLAVモデルではPEEPは肺に保護的であるが、OAモデルでは必ずしもPEEPの適用が保護的であるという所見は得られなかった。
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