研究課題/領域番号 |
16591529
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
渋江 智栄子 新潟大学, 医歯学総合病院, 助手 (90303148)
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研究分担者 |
河野 達郎 新潟大学, 医歯学系, 助教授 (00313536)
本間 隆幸 新潟大学, 医歯学系, 助手 (20345531)
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キーワード | 吸入麻酔薬 / 脊髄後角 / ガンマアミノ酪酸 / シナプス伝達 |
研究概要 |
全身麻酔薬は意識消失、不動化および自律神経抑制などの作用を有し、その作用機序として非特異説、および特異説が考えられている。近年、揮発性麻酔薬の不動化を示す指標としての最小肺胞濃度(minimum alveolar concentration : MAC)が脳ではなく脊髄レベルで決定されるという報告がある。また、多くの揮発性麻酔薬が臨床濃度でGABA_A受容体に作用し、抑制性電流を増強させることがわかっている。そこで、痛みの伝達に重要な部位である脊髄後角におけるイソフルランの作用機序をラット脊髄スライス標本を用いて、後角第II層細胞からホールセルパッチクランプ法により電気生理学的に解析した。1.5%イソフルラン(1MAC)は脊髄後根誘起による単シナプス性興奮性シナプス後電流(excitatory postsynaptic current : EPSC)ではなく、多シナプス性EPSCを抑制した。また、イソフルランは自発性放出によって生じる微小EPSCの頻度および振幅には影響を及ぼさなかった。それに対して、イソフルランは局所刺激によるGABA_A受容体を介する抑制性シナプス後電流(inhibitory postsynaptic current : IPSC)および微小IPSCの減衰時間を延長させた。さらに、ムシモール(GABA_A受容体アゴニスト)の潅流投与によって誘起される電流の振幅を増大させた。しかし、脊髄後角細胞における活動電位の発生にはほとんど影響を及ぼさなかった。以上の結果から、脊髄後角細胞のGABA_A受容体を介する抑制性シナプス伝達を増強させることが、イソフルランの脊髄レベルにおける抗侵害作用メカニズムであるといえる。
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