研究概要 |
本研究の目的は、最も古典的な神経伝達物質であるアセチルコリンの痛覚伝達への関わりについて、末梢の神経組織に優勢に発現する末梢型コリンアセチル基転移酵素(pChAT)をコリン神経の指標として検討することにあった。初年度である16年度はpChATに対する免疫組織化学法を用い、後根神経節(DRG)からのpChAT陽性神経線維の中枢・末梢への投射経路を明らかにし、DRG神経でのpChATとSP, CGRP, NOS, VR1の共存関係を明らかにした。さらにはpChAT陽性神経の神経刺激に対する挙動を細胞レベルで検討するための基盤実験として、pChATタンパク質の細胞内移動を検討した。2年目である17年度はこれらの結果をふまえ、pChAT陽性DRG神経の神経終末と、ターゲットである中枢・末梢組織のアセチルコリン受容体(AChR)の関係を検討した。いくつかの抗AChR抗体を試したが、いずれも研究期間内には満足のいく染色結果は得られなかった。またpChAT神経終末に関しても、細胞体や投射途上の神経線維ではpChAT免疫反応は明瞭に観察されるのに対し、神経終末ではそれらと同等の描出が困難であることが判明した。研究期間満了時では受容体、終末の双方の形態観察にこのような技術上の問題があり、当初の目的の達成のためさらなる実験条件の探索を継続中である。17年度の検討のもう一つの課題であったDRGからのアセチルコリンの放出の観察については、はじめにDRG神経がアセチルコリンを含有することを化学発光法にて直接確認した。また培養細胞系でも初代培養神経に対するpChAT免疫組織化学法により、培養下でpChAT蛋白の合成が継続し、神経細胞内に蓄積されることを確認した。この培養神経細胞からのアセチルコリンのリリースの定量に関しては、酵素カラムを用いたHPLC法により検討を継続している。
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