研究課題
基盤研究(C)
麻薬の長期投与によって免疫抑制が引き起こされるが、これには遺伝子発現の変化に基づく免疫系の可塑的変化が関与している可能性がある。麻薬によって免疫細胞に生じる遺伝子発現の変化を検討する目的で、以下の実験を行った。血液から単離したT細胞を塩酸モルヒネ10μMで12時間刺激し、刺激前後の細胞から得たcDNA群間でsubtraction PCRを施行、モルヒネ投与で発現の変化する遺伝子をdifferential screeningにより検索した。モルヒネによって発現誘導される分子の中で特徴的なものに、p53、eukaryotic initiation factor 5A(eIF5A)、syntenin等のアポトーシス制御因子があった。さらにDNAが損傷を受けた際に誘導されるdamage-specific DNA binding protein 2(DDB2)の発現も増加した。現在、次のような作業仮説を立てて研究を継続している。すなわち、モルヒネ刺激によりT細胞にストレス刺激が入りDNA損傷をきたす。それに反応してp53が誘導され、その制御にeIF5Aとsynteninが関与する。さらにDDB2が誘導され、DNA修復に関与する。DNA修復が不十分な細胞はアポトーシスを引き起こす。生体が手術等でストレスを受けると、視床下部-下垂体-副腎系が活性化される。この過程で視床下部から分泌されたCRFにより、下垂体前葉でプロオピオメラノコルチン(POMC)遺伝子の発現誘導がなされ、ACTH等の分子が放出される。POMCプロモーターの下流にルシフェラーゼ遺伝子を組み込んだプラスミドを導入した下垂体系培養細胞を使用し、POMC遺伝子発現に対する麻酔関連薬物の作用について検討した。その結果、CRFあるいはforskolinによるPOMC発現誘導を、局所麻酔薬およびカルシウム拮抗薬の一部が増強することが明らかとなった。
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European Journal of Pharmacology 558
ページ: 1-6
Regional Anesthesia and Pain Medicine 32・1
ページ: 60-66
Regional Anesthesia and Pain Medicine Vol 32,No 1
European Journal of Pharmacology Vol 558