RNA干渉による急性肺傷害に対する治療戦略の実験的検討を目的に、ヒト2型肺胞上皮細胞由来であるA549細胞を用いて実験を行なった。初年度から最終年度にわたりA549にヒトIL-8遺伝子に対する合成siRNA(small interference RNA)を高率に形質導入できる方法を検討した。21塩基からなるIL-8のsiRNA(ロダミン標識)を非ウィルスベクターであるHVJ envelope vectorを用いてトランスフェクションを試みたが導入効率はきわめて不良で、それに対する改善策としてsiRNAの濃度を上げたりトランスフェクション時間を十分にとりトランスフェクションを行なったが、最終的に導入効率は悪く今までの実験結果を改善するには至らなかった。A549培養細胞の密度をいろいろ設定して導入も施行したが導入効率はきわめて低いものであった。また導入効率を高めるためにリン酸カルシウム法DEAEデキストラン法、リポフェクション法およびトランスフェクションプレートやトランスフェクタムの使用による各方法を試みたがすべて確実な形質導入は得られなかった。ゆえに本システムを以後の急性肺傷害にむけた実験に供することは不可能であった。効率よい形質導入にむけてマイクロインジェクション法、エレクトロポレーション法、FuGENE 6 transfection reagent法も試す必要があるものとおもわれた。
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