マラソンのような持久走運動時の吸気・吸気、呼気・呼気の重畳形式でなされる呼吸は、代謝が亢進している状況下で長時間にわたって必要とする酸素の摂取や炭酸ガスの排泄を可能ならしめている。さらに、マラソン負荷は肺に対しても相当な侵襲を与えるものと推測されるが、該ストレスが少なくとも肺の生理学的不均衡までには及んでいない、といった証拠を考え、ventilator induced lung injuryに対処する目的で利用されているsmall tidal ventilation法より優れた効果が期待できるのではないかと考えた。 そこで、本呼吸パターンを利用した陽圧換気法の肺酸素化効率および肺の保護効果について家兎を用いた動物実験で検証した。吸気・呼気相時間(秒)配分は0.3(吸)、0.2(止)、0.3(吸)、0.2(止)、0.3(呼)、0.2(止)、0.3(呼)、0.2(止)で、これを一呼吸として繰り返すモードとした。 結果は、 1)マラソン型重畳呼吸式人工呼吸法は一回換気量および分時換気量においても低容量換気法でありながら酸素の摂取効率に問題もなく、かつ、炭酸ガスの蓄積を抑えることができた。 2)当然、気道内圧も低く抑えることができた。 3)その効果は、吸気・吸気、吸気・呼気、呼気・呼気間に設けた一呼吸中3箇所のpause期における肺内でのガスの再分配現象によるものと思われた。 4)個体ごとに換気条件(吸気・呼気時間)が異なるものと思われるが、条件を設定するに当たり、その間に生じるであろう肺虚脱を防ぐための時々のinflationは有効である。 5)2段階の呼気終末陽圧(PEEP)を設定することができ、更なる効果が期待できる。 6)BALF中MPO活性、W/D比による比較では従来量換気法(TV=8ml/kg)より優れた保護効果が認められた。
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