研究概要 |
岡山大学グループは平成10年10月に日本で初めての肺移植を成功して以来、平成18年3月までに46例の肺移植を施行した。これは、日本での肺移植実施数の半数を占めている。残念ながら3例を失ったが、その他の患者は生存し、多くの患者が元気に社会復帰している。肺移植の先進国である欧米の手術成績は急性期死亡率約20%、5年生存率45%と報告されており、我々の施設の成績は日本のみならず世界的にも最高である。 肺移植に際しては多くの症例において術中の移植直後から術後数日間にかけて虚血再灌流傷害が原因と考えられる呼吸不全が発生する。しかし、肺移植後の急性期死亡原因の大きな一つである虚血再灌流傷害を予防する方法は確立されていない。我々の研究目的は,肺移植後の虚血再灌流傷害における炎症性サイトカイン(インターロイキン6,8,10、TNF-α)と好中球エラスターゼの移植前,移植肺への再灌流直前・直後,移植後の血中濃度の変動を測定し、移植肺の病態と治療効果を検討し,再灌流傷害の原因を探索することである。特に、人工心肺の使用により再灌流傷害が増悪することが予測されるため、人工心肺の影響を合わせて検討を行っている。 平成16年度から17年度にかけて13例の肺移植(生体部分肺移植10例、脳死肺移植3例)を行い、インターロイキン6,8,10、TNF-α、好中球エラスターゼの移植前,移植肺への再灌流直前・直後,移植後の血中濃度を測定し、移植肺機能と人工心肺の使用の影響を検討中である。平成17年10月に米国麻酔学会(アトランタ)において研究の中間成果に関して発表し討議を行った。現在、研究成果を集計し解析を行っている。
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