研究概要 |
短時間作用型β_1遮断薬ランジオロールの心筋保護作用に対する麻酔薬の影響を検討した。 1.ウサギを用いて冠動脈閉塞モデルを作成し,s(+)-ketamine(5mg/kg/hr),xylazine(1mg/kg/hf)にて麻酔維持するケタミン(K)群,ケタミン+ランジオロール(K+L)群およびセボフルラン1MACで麻酔維持するセボフルラン(S)群,セボフルラン+ランジオロール(S+L)群に分類した。ランジオロールは20μg/kg/minで静脈内持続投与し,左冠動脈鈍縁枝を30分閉塞し180分間再灌流を行った。実験終了後10%Evans blueを注入,心臓の横断スライスを作成1% triphenyl-tetrazolium chlorideで染色し心筋梗塞範囲,梗塞危険領域および全左室の重量比を計測した。心筋梗塞範囲/梗塞危険領域比(mean±SE)はK群:59±4%,K+L群:42±11%,S群:41±4%,S+L群:27±5%と,K群と比較しK+L群,S群は心筋梗塞範囲が小さく,S+L群ではさらに有意に減少した。 2.雑種成犬を用いて左冠動脈回旋枝(CX)に電磁血流計プローブおよびコンストリクターを装着し冠動脈狭窄モデルを作成した。ペントバルビタール1mg/kg/hrで麻酔維持し,CX灌流域の心筋内層に心筋酸素分圧測定用の高分子膜コーティング白金探査電極(直径200μm)を固定した。Baseline測定後,CX血流量が約80%になるように狭窄し,狭窄15分後からランジオロールを2μg/kg/minで静脈内持続投与した。CX狭窄により心筋内層酸素分圧値(PtiO2)は29.0±3.6mmHgから20.2±3.3mmHgに有意に低下した。ランジオロール投与15分後,30分後にはCX血流量はさらに低下したが,PtiO2はそれぞれ27.6±4.4mmHg,30.0±5.2mmHgへと有意に上昇した。 短時間作用型β_1遮断薬ランジオロールは冠動脈閉塞モデル/狭窄モデル両者において心筋保護作用を示した。ATP感受性Kチャネルを介してanesthetic preconditioning作用を持つセボフルラン麻酔下ではこの心筋保護作用が増強されることが示唆された。
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