研究概要 |
研究に同意の得られた血管手術患者14名を対象とした。チアミラールまたはプロポフォールにて麻酔導入し気管挿管後に,中心静脈カテーテルおよび経食道心エコープローブを挿入した。セボフルラン群(9名)はセボフルラン,亜酸化窒素(50%)/酸素にて麻酔維持した。プロポフォール群(5名)はプロポフォールを用いてTarget Control Infusion(3μg/ml)および亜酸化窒素(50%)/酸素で麻酔維持した。麻酔導入後より,各群ともにランジオロール20μg/kg/minで静脈内持続投与した。経食道心エコー法を用いて経胃的左室短軸像を描出し,局所壁運動を連続的にモニターし,InteliVue Information Centerを用いて麻酔中の全心電図記録のST-Tトレンド解析を行った。麻酔導入前(1),手術終了直後(2),12時間後(3),24時間後(4)にトロポニンI,トロポニンT,CK-MBをそれぞれ測定した。 セボフルラン群では5例が心電図上心筋虚血エピソードを示したが,トロポニンI,トロポニンTの異常値を示した症例はなかった。CK-MBは8例で手術終了以降に軽度の上昇を示した[(1)3.1±0.9,(2)5.7±1.3,(3)7.2±1.4,(4)7.7±2.1ng/ml,mean±SE]。プロポフォール群では1例において心電図変化を,1例が心電図変化,局所壁運動異常の両者を認めた。ST-T変化および壁運動異常を示した患者は,術後12時間以降にトロポニンI[(3)1.07,(4)1.24ng/ml],トロポニンT[(3)13.4,(4)12.5ng/ml],CK-MB[(3)167.4,(4)192.6ng/ml]が高値であった。 セボフルラン麻酔下での術中ランジオロール持続投与は心筋虚血予防に有用である可能性が示唆された。
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