研究概要 |
【平成16年度】 ウサギ冠動脈閉塞モデル(n=25)をケタミン(K)群,ケタミン+ランジオロール(K+L)群,セボフルラン(S)群,セボフルラン+ランジオロール(S+L)群に分類した。ランジオロールを20μg/kg/minで静脈内投与し左冠動脈鈍縁枝を30分閉塞,180分間再灌流を行った。心筋梗塞/梗塞危険領域比(mean±SE)はK群:59±4%,K+L群:42±11%,S群:41±4%,S+L群:23±3%と,K群と比較しK+L群,S群は心筋梗塞範囲が小さく,S+L群ではさらに有意に減少した。 雑種成犬冠動脈狭窄モデル(n=10)をペントバルビタール1mg/kg/hrで麻酔維持,左冠動脈回旋枝血流量が約80%になるように狭窄し15分後からランジオロールを2μg/kg/minで静脈内持続投与した。狭窄により心筋内層酸素分圧値(PtiO2)は有意に低下した。ランジオロール投与15分後,30分後にPtiO2はそれぞれ27.6±4.4mmHg,30.0±5.2mmHgへと有意に上昇した。 【平成17年度】 血管手術患者14名を対象としセボフルラン,亜酸化窒素(50%)/酸素またはプロポフォール,亜酸化窒素(50%)/酸素で麻酔維持した。麻酔導入後より,各群ともにランジオロール20μg/kg/minで静脈内持続投与した。セボフルラン群ではトロポニンI,トロポニンTの異常値を示した症例はなかった。プロポフォール群では1例が術中心電図変化,局所壁運動異常の両者を認め,術後12時間,24時間にトロポニンI,トロポニンTおよびCK-MBが異常高値であった。 短時間作用型β_1遮断薬ランジオロールは動物実験および臨床において心筋保護作用を示した。Anesthetic preconditioning作用を持つセボフルラン麻酔下ではこの心筋保護作用が増強されることが示唆された。
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