経皮的コルドトミー(PCC)は、脊髄の前側索に位置する痛覚伝導路の遮断術で癌性疼痛に有用であるが、前索から前側索の腹側部に位置する呼吸伝導路が障害され呼吸不全を起こす場合があることが報告されている。今回細い電極針で選択的が凝固巣で鎮痛を得る事により呼吸不全の発生が予防できるか調査した。PCC施行64例で、呼吸器合併症および施行前後での呼吸機能検査を行い、PCCの呼吸機能に及ぼす影響を調べた。64例中片側PCC施行症例が53例あり、両側が10例あった。64例中片側PCCを予定していた1例および両側施行を予定していた1例では電気刺激時に呼吸困難になり、中止した。片側施行例では軽度の呼吸機能低下(%VCが術前66.2±23.5%から60.4±21.3%)が認められたが、両側施行例では呼吸機能の低下は無かった。片側および両側施行いずれも呼吸器合併症は無かった.脊髄の組織変化は主に前側索の背部にあり、前索には及んでいなかった。電気刺激で呼吸困難を起こした2例はいずれも施行前に両側に胸水および瀰漫性の肺内病変が有り、術前に多呼吸があった。以上より細い電極針により選択的な凝固巣の作成ができ、PCCによる呼吸機能低下は軽微であり臨床的に問題ならないことが判った。ただ、術前に多呼吸などの呼吸障害徴候のある例はPCCの適応にならない。この64例中3例でCTを使用しPCCを行った。ハブの部分がプラスチック製の20G9cm脊麻針を使用した。針刺入時にCTスキャンを随時施行し、脊髄と針の位置を調べ、針先の位置を調節した。CT法では脊髄と針の関係が視認することができ、呼吸伝導路を避けて選択的な凝固巣ができるので呼吸不全の発生を回避できると推察された。
|