目標:研究代表者はこれまでに、局所麻酔薬選択性ガラス微小電極を作成し、細胞内局所麻酔薬濃度の連続的測定を可能にした。電極法は、対象イオン濃度に応じて生じる起電力を測定するため、イオン化しない物質の濃度測定には向かない。本研究の目標は、イオン化しない薬物の血中濃度を簡便に測定することである。具体的には、静脈麻酔薬であるプロポフォールの検出に分子刷り込みポリマー(molecularly imprinted polymer : MIP)の薄膜を水晶振動子表面に形成し、水晶振動子マイクロバランス(Quarts Crystal Microbalance : QCM)を作成する計画である。MIPは、モノマーに鋳型物質を適宜混和して重合させて合成する。MIPから鋳型物質を洗い出すと、鋳型物質と選択的に結合する特性を示す。平成16年度には、ガラス平板上にMIP膜を形成する試みを行った。平成17年度の研究目標は、プロポフォールを鋳型物質とするMIPを合成し、センサとしての特性を確認することとした。 方法と結果:平成16年度に続き、MIP材料は、鋳型物質にプロポフォール、モノマーにメタクリル酸、架橋剤にエチレングリコールジメタクリレート、重合開始剤にアゾビスイソブチロニトリルを用いた。各々の割合は、鋳型物質を1とするモル比で1:6.5:8.5:0.4とした。平成16年度には、MIP材料をスライドグラス表面上で重合させたが、膜厚のコントロールが困難であった。平成17年度には、沈殿重合法により微小球状MIPを生成し、PVCをバインダとして、スライドグラス上あるいは水晶振動子表面上に塗布する方法も検討した。しかし、微小球状MIPを薄く均一な塗膜に仕上げることに難渋した。QCMセンサとして活用するには、可能な限り、薄くかつ高密度にMIP微粒子を水晶振動子表面に分散させる必要がある。今後こうした技術的問題点の解決が必要である。
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