研究概要 |
(1)臨床症例における検討 椎間板ヘルニア,脊柱管狭窄症,Failed back Surgery症候群によって難治性の腰下肢痛を有し,同意の得られた26症例で硬膜外腔鏡を行った. 硬膜外腔鏡は,(1)セルジンガー法を用いてイントロデューサーを仙骨裂孔より硬膜外腔に挿入し,(2)あらかじめビデオガイドカテーテルを装着した細径内視鏡を,イントロデューサーを通して硬膜外腔に挿入し,(3)生理食塩水を注入しながら,硬膜外腔の観察,潅流,洗浄,癒着剥離を内視鏡下で行い,局所麻酔薬とステロイドを投与した. その結果,(1)過去に腰椎手術を受けた既往のある症例では,既往のない症例よりも高度の癒着が硬膜外腔に存在すること,(2)椎間板ヘルニアを有する例では,ヘルニアおよび神経周囲の結合組織に炎症所見が存在することを内視鏡で確認した.硬膜外腔鏡を行うことにより,対象の大部分で腰痛と下肢痛が軽快傾向を示した.重篤な合併症を認めた症例は無かった.対象を引き続き経過観察して,長期的な成績を検討することとした. (2)実験動物における検討 セボフルラン麻酔下のブタにおいて,硬膜外腔鏡を行った.ブタ硬膜外腔がヒト硬膜外腔と類似することを確認した.また,手術と薬剤を用いて硬膜外腔の癒着モデルを作成した後に硬膜外腔鏡を行った.薬剤を用いて形成された硬膜外腔の癒着は内視鏡操作による剥離が可能であった.内視鏡操作中の生理食塩水の投与に伴う硬膜外腔の圧力は,癒着モデルでは対照よりも大きい傾向があった.
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