研究概要 |
全身麻酔薬は脳虚血に対して保護的に作用すると言われている.特にin vitroの実験系では盛んに研究され,その効果が報告されている.事実,吸入麻酔薬であるイソフルラン.セボフルランは確認されている.そこで,我々もマウス(C57BL/6J)による脳スライス標本を用いて,虚血負荷に対する吸入麻酔薬の脳保護効果を観察した.In vitroにおける虚血作成には酸素とグルコースの供給を行わないoxygen and glucose deprivationで作成した.まずは酸素とグルコースを含んだ人工脳脊髄液で還流しながら線条体の投射ニューロンであるMSニューロンに対してWhole cellパッチクランプを行い,静止膜電位を観察した.のちに,虚血負荷をおこなうが,この虚血時間により上昇した静止膜電位が元に戻るかどうかを検討した.その結果,5分間の虚血負荷では約90%の細胞は非可逆性に静止膜電位はもどらず,細胞が死が確認された.しかし,吸入麻酔薬(2MAC)の負荷を行うと,5分間の虚血負荷にもかかわらず,約50%の細胞の静止膜電位は戻った.このように吸入麻酔薬には虚血に対する保護効果がみられた.さらにGABA受容体の拮抗薬であるBMIを添付すること,吸入麻酔薬にみられた保護効果は消失した.これにより吸入麻酔薬のもつ脳保護効果発現にはGABA受容体の関与が示唆された.
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