研究概要 |
小児の鼠径ヘルニア手術予定患者を対象に、全身麻酔に加えて腸骨鼠径および腸骨下腹神経ブロックを、0.5%(0.5%群)または0.2%ロピバカイン(0.2%群)0.6ml/kgを施行し、術後の痛みの評価に行動応答から評価するMBPS評価表(0から10の11段階)、自律神経機能の評価目的に心電図のRR間隔の周波数解析、唾液中のクロモグラニンA濃度を入院時、術後1,6時間後に測定した。これまでの4名を実施した結果、術後1,6時間ではMBPSの点数は、両群ともに3点以下であった。この間には追加の鎮痛薬であるアセトアミノフェンを使用した児はなかった。この結果から、いずれの濃度であっても同様に十分な鎮痛効果が発揮される傾向が認められた。また自律神経機能を評価するために実施した心電図のRR間隔の周波数解析の結果は、心臓副交感神経活動の状態を表すとされている高周波数帯域については、両群とも、入院時、術後1,6時間の3時点での大きな変化はない傾向が認められた。また交感神経活動と副交感神経活動の両方の活動状態から影響を受けている高周波数帯域についても、両群とも、入院時、術後1,6時間の3時点での大きな変化はない傾向が認められた。この結果から、術後に自律神経活動に強く影響を与える、痛みも含めた生体への刺激は生じていない可能性が考えられた。唾液中のクロモグラニンAの値は、両群とも、入院時、術後1,6時間の3時点での大きな変化はない傾向が認められた。この結果は、少なくとも術後に強い痛みによるストレスは生じていないことが反映されている可能性が考えられた。以上より、実施した患児数は少ないが、第一に低濃度のロピバカインで十分な鎮痛効果が得られる可能性、さらには、心電図のRR間隔の周波数解析および唾液中のクロモグラニンA濃度の結果も、従来の行動応答の指標であるMBPSの結果を支持する傾向が示唆された。
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