我々はすでに、ヒトにおいてcolforsindaropateをあらかじめ投与しておくと、麻酔導入、気管挿管後の気管支の収縮を抑制し得る事も発見した。今回、carperitide(遺伝子組み換え-α型ヒト心房性ナトリウム利尿ペプチド)に関しても同様の検討を行った。 新しく得られた結果として、気管挿管前に、気管支拡張作用のあるcarperitideの静脈内投与による前処置が、喫煙者のみならず、非喫煙者においても気管挿管後の気道抵抗をより下げることが明かとなった。また、コンプライアンスより気道抵抗の方が鋭敏であることが明らかになった。 術前より気管支拡張剤を投与した場合、喫煙者のみならず、非喫煙者においても気管挿管直後の気道抵抗を有意に低下させる事が明らかになった。COPD患者は、サンプル数が充分でなく、明らかな結論を導き出すことは出来なかった。 術後は、気管支拡張剤を使用した方が喀痰を出しやすく、血液ガスが良好な傾向が見られた。中・長期予後に関しては、患者背景(術式など)にばらつきが多く、また、サンプル数が充分ではなく、エビデンスとして結論づけることは早計と考えられたが、気管支拡張剤投与は積極的に周術期に使用すべき薬剤の一つと考えられた。 また、気管支拡張剤の種類についての検討も必ずしも充分とは言えず(麻酔下では、colforsindaropateやcarperitideが有利であると思われた)、今後の検討課題として残った。また、投与量に関しても充分な検索を行えず、今後の検討課題である。 将来的展望として、サンプル数を増やすことにより、周術期の気管支拡張剤使用についてのガイドラインの作成が上げられる.標準化を行うことにより、多忙な医師にとっては有利をもたらし、患者にもメリットをもたらし、また、医療費削減をも可能にすることが出来る可能性が高いと考えられた。
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