平成16年4月1日から平成17年12月31日までに当院で行った麻酔科管理下の肝切除術は90例であった。麻酔方法別には硬膜外麻酔を併用したものは46例、硬膜外麻酔を併用しないものは44例であった。硬膜外麻酔を併用したものではすべて硬膜外注入局所麻酔薬としてロピバカインを用いた。麻酔方法による手術後在院日数を調べた。亜酸化窒素+イソフルラン+ロピバカインは38例で41.8日、イソフルラン+ロピバカインが4例で37.0日、亜酸化窒素+セボフルラン+ロピバカインが3例で34.0日、セボフルラン+ロピバカインが1例で28.0日であった。硬膜外麻酔を併用しないものの麻酔方法は笑気+イソフルラン+フェンタニールが36例で64.3日、亜酸化窒素+セボフルラン+フェンタニールが4例で29.5日、イソフルラン+フェンタニールが3例で48.3日、亜酸化窒素+イソフルランが1例で26.0日であった。麻酔方法別には、手術後在院日数に有意の差はなかった。しかし、亜酸化窒素+イソフルラン+ロピバカイン群38例の41.8日、笑気+イソフルラン+フェンタニール群36例の64.3日の間には優位の差はないものの、ロピバカイン群で手術後在院日数が短い傾向がみられた。 麻酔方法によって、肝静脈酸素飽和度から見た肝低酸素侵襲が変わるかどうかについては、硬膜外麻酔を併用した群と併用しなかった群では有意な差がなかった。 麻酔法を細菌感染との関連を調べるため、PCRを行うためのキットを購入し、実験モデルを作成したが、この研究期間内では臨床的応用に至らなかった。麻酔方法によって細菌感染の頻度に有意な差はなかったが、PCRモデルを使っての麻酔方法の影響については今後の課題となった。 結論として、麻酔方法によっては硬膜外麻酔を併用すると、肝低酸素侵襲と細菌感染に差はなかったが、手術後在院日数が減少する傾向が見られ、医療経済的に有意である可能性が示された。
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