ヒスタミンの受容体にはH1、H2、H3、H4受容体の四種類がある。発痒物質としてのヒスタミンの作用は、感覚神経終末に存在するH1受容体を介することが示唆されており、この感覚は伝導速度の遅い一次感覚ニューロンにより中枢に伝えられる。しかしながら、どの様な一次感覚ニューロンがヒスタミンに感受性を示し、その情報がどのようなルートで体性感覚野に伝えられるのか、不明な部分も多い。これまで我々は、モルモットやラットの感覚神経節においてISH法、免疫組織化学法、RT-PCR法を駆使し、H1受容体もしくはそのmRNAを発現するニューロンについて検討を進めてきた。今年度は、ラット脊髄の新鮮スライスを用いたパッチクランプ法により解析を進めた。ラットにおいてH1受容体を発現している感覚神経は興奮性神経ペプチドであるSPやCGRPを含有しているものとしてないものがある。SPやCGRPをスライスに作用させると後角深層(III〜VI層)のニューロンの約半数においてゆっくりしたinward currentが観察される。これらの応答は、神経ペプチドが直接記録するニューロンに作用したものと考えられる。これらのペプチド(SP/CGRP)に応答する後角表層(I〜II層)のニューロンは今のところ見つかっていない。一方、ヒスタミンの投与によってEPSCが増加するニューロンが観察された。これらのニューロンは非常に数が少なく、やはり深層のニューロンであった。このEPSCが増加する膜電位変化は、投与したヒスタミンが一次感覚ニューロンからのグルタミン酸の放出を促し、記録するニューロンに作用したものと考えられる。この時、前述した興奮性神経ペプチドに見られるゆっくりしたinward currentを観察することはできなかった。今後更にデータを蓄積し、ヒスタミンに応答するニューロンの解析を進めなければならないと考えている。
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