研究概要 |
我々が見い出した内因性のペプチド・spinorphin(Leu-Val-Val-Tyr-Pro-Thr-Trp)が、薬理実験によりブラジキニン発痛系における鎮痛効果を、またカラゲニンを用いた急性炎症モデルにおける抗炎症効果など多様な生理機能を有することを、解明してきた。更に、炎症病態および免疫異常疾患である関節リウマチ(RA)の関節液中において、本物質およびその代謝酵素が顕著な動態を示すことも明らかにしてきた。このような研究背景のもと、RA病態におけるspinorphinの役割を解明することを最終目的として、今年度は二次元電気泳動法および質量分析法(MALDI-TOF/MS)を用いて患者およびコントロールとの発現差異解析を行ない、RA患者における脊髄液中の病態関連蛋白質(disease-associated proteins)を探索した。まず、二次元電気泳動による蛋白質の検出と分離を改善するために、脊髄液サンプルの前処理法を検討した。サンプルは、albuminおよびIgG除去キットで前処理し,更にアセトン沈澱を行なうことにより、泳動ゲル上で600以上のスポットを検出できた。コントロールとRA患者の脊髄液を用いた発現差異解析から、ceruloplasmin, α1-antitrypsin, α-microglobulin, transthyresinなどの脊髄液マーカー蛋白質に変化は認められなかった。しかしながら、RAサンプルのいくつかの蛋白スポットは、2倍以上の発現動態を示す顕著な変化が認められた。現在これらの動態を示す蛋白質について質量分析により同定を進めている。今後、新たに導入された蛍光標識二次元ディファレンスゲル電気泳動装置(2D-DIGE)を組み合わせて、関節リウマチにおける病態関連蛋白質の候補を解析していくと同時に、疼痛および炎症制御物質としてのspinorphinの役割を解明していきたい。
|