去勢ラットの前立腺局所に薬剤を投与し、レーザー血流計により前立腺の血流を評価する動物実験モデルを確立した。この血流評価法と従来用いられていた放射能ラベルマイクロスフィアーを用いる血流評価法との比較検討を去勢ラットにアンドロゲンを投与したモデルを用いて行った。その結果2つの測定法による前立腺血流測定結果に相違はなく、レーザー血流計を用いる方法では、生体でのリアルタイム血流測定が可能であること、放射能物質を用いないため簡便で、放射能汚染がないため組織を他のアッセイに用いることが可能であることなど、多くの利点があった。 確立した動物モデルを用いてアンドロゲンによる前立腺血流調節における血管内皮増殖因子(VEGF)の関与を明らかにした。その結果、去勢ラット前立腺に対してVEGFはDihydrotestosterone(DHT)と同等の血流増加作用を有することが明らかになった。VEGF投与による血流増加作用は投与後30分と早期に認められ、アンドロゲン投与による前立腺血流増加作用よりも早期であった。またDHTによる前立腺血流増加作用はVEGFの中和抗体を同時投与することにより完全に抑制された。さらに前立腺におけるVEGF遺伝子の発現はアンドロゲン刺激により増加し、中和抗体の同時投与により発現が減少した。以上より、VEGFはアンドロゲンによる前立腺血流調節に関与していることが示された。またVEGFはアンドロゲンによる前立腺血流調節シグナル伝達においてアンドロゲンより末梢で作用することが明らかになった。
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