研究概要 |
1.去勢ラット前立腺局所に薬剤を投与し、レーザー血流計により前立腺の血流を評価する動物実験モデルを確立した。放射能マイクロスフィアーを用いる血流評価法を比較すると2つの測定法による前立腺血流測定結果に大きな相違はなく、レーザー血流計は、生体でのリアルタイム血流測定が可能であること、放射能汚染がなく組織を他のアッセイに用いることが可能であることなどの利点があった。 2.去勢ラット前立腺に対して血管内皮増殖因子(VEGF)はDihydrotestosterone(DHT)と同等の血流増加作用を示した。VEGFの作用は投与後30分と早期に認められた。またDHTによる前立腺血流増加作用はVEGFの中和抗体により完全に抑制された。さらに前立腺におけるVEGF遺伝子の発現はアンドロゲン刺激により増加し、中和抗体の同時投与により減少した。以上より、VEGFはアンドロゲンによる前立腺血流調節に関与していることが示された。 3.ラット前立腺局所にアンジオテンシンII(AT2)、エンドセリン(EC)を投与すると、AT2の投与後30分では、前立腺血流は前値に比し容量依存的に23-40%抑制された。EC1,2,3いずれの投与でも前立腺血流は抑制され、投与後30分では前値に比し59-73%抑制された。AT2およびECは前立腺血流に対し抑制的に作用することが明らかとなった。アドレノメデュリン(ADM)、プロスタグランジンE2(PGE2)は前立腺血流増加作用をもつことを確認した。両者とも投与後10-30分の早期に前立腺血流を増加させ、容量依存性の作用を示した。前立腺のADM、PGE2遺伝子発現量はアンドロゲンの刺激により増加し、またアンドロゲンの前立腺血流増加作用は、ADM、PGE2の拮抗剤の同時投与により阻害され、これらの因子がアンドロゲンによる前立腺血流調節機構に関与していることが明らかとなった。
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