第2次大戦後、わが国においても上部尿路結石患者の増大を認め、その増加率は脂肪摂取量の増加とパラレルである。一方、尿路結石患者の80%は蓚酸カルシウム結石であり、尿中蓚酸排泄量は通常1日40mg以下と尿中カルシウム排泄量の10分の1に過ぎないことを考えると尿中蓚酸排泄量の微量な増加が結石形成に大きく関わることが予想される。我々はこれらに注目し、尿中蓚酸排泄量と脂肪摂取量の間に相関があることを見出した。尿中蓚酸排泄量に関わる食事由来の蓚酸の割合は従来10%弱とされてきたが、近年50%に及ぶとの報告もなされている。そこで我々は、尿中蓚酸排泄量がどの程度食事の影響を受けるのか、健常者(ボランティア)に対し、高脂肪、高蛋白負荷、蓚酸負荷試験を施行した。その結果、尿中蓚酸排泄量の増加を認める群とほとんど増加しない群に分かれた。これらの2群は、腸管による蓚酸の吸収に差があるものと思われ、蓚酸トランスポーターの機能に差がある可能性を認めたので、現在、蓚酸のトランスポーターであるhSAT-1の遺伝子の異常があるかにつき、解析をすすめているところである。現在までに、いくつかの変異を発見した。これらの機能解析、また蓚酸カルシウム結石患者における解析を今後すすめていく所存である。また、従来より、施行しているシスチン尿症患者に対するアミノ酸トランスポーターSLC22A1の遺伝子解析においても新たなmutationを同定した。
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