研究概要 |
研究A膀胱電気刺激知覚閾値の検討:前立腺肥大症(BPH)患者9名及び間質性膀胱炎(IC)患者5名を対象として,皮膚の知覚閾値測定装置であるニューロメーターを膀胱知覚閾値測定に応用し,膀胱粘膜を異なる3種類の周波数(2500Hz,250Hz,5Hz)で電気刺激し,その閾値を測定したところ,IC群において,BPH群に比べて,いずれの周波数刺激に対しても閾値が低下していた.さらに,IC群4名において,局所麻酔薬(0.5%塩酸ブピバカイン)を膀胱内に注入したところ,注入後にその閾値が増加した.以上の結果から,IC患者では電気刺激に対する膀胱知覚閾値が低下して膀胱知覚過敏になっており,この知覚過敏は局所麻酔薬の膀胱内注入によって緩和されることが示唆された. 研究Bレジニフェラトキシン(RTX)膀胱内注入療法の臨床的検討:難治性の排尿筋過活動(DO)患者6名及びIC患者6名を対象として,RTX膀胱内注入療法を施行し,その有効性および安全性を検討した.DO群では評価不能例1例を除く5例中4例において,治療後1週以内に効果が発現し,その効果は3〜9か月間持続した.IC群では6名全例に治療後1週以内に症状が改善し,特に疼痛スコアと平均1回排尿量の有意な改善を認めたが,その効果の持続は2〜3か月間と短かった.特に重篤な有害事象を認めなかった.本注入療法は,難治性のDOやICに対する新しい治療法として期待しうるが,適応症例の選別,投与量・投与方法等,今後検討すべき課題も多いことが示唆された. 研究C膀胱におけるVR1受容体およびP2X3受容体の局在の検討:膀胱癌患者4名の膀胱全摘出標本の健常部を対照群として,VR1受容体およびP2X3受容体の局在を免疫組織化学的に検討したところ,いずれの受容体も膀胱粘膜に局在することが確認できた.IC患者2名より膀胱粘膜を採取し,比較検討中である.
|