研究概要 |
ヒトの核マトリックスタンパクHMGI(Y)に対する抗体は現在、Santa Cruz社から市販されているもののみであり、これを用いた。まず最初に、ヌードマウスに移植された前立腺癌細胞株PC3のXenograftを用いて免疫組織染色を行った。この細胞株はすでに申請者らが、抽出核タンパクを用いてのWestern blotにおいてHMGI(Y)の発現を確かめているものである。結果は、核マトリックスタンパクではあるが、細胞質内にもわずかに染色が認められた。核内においては、顆粒状の染色像を示すものや、Homogenousな染色像を示す細胞が混在していた。これは、それぞれの細胞が細胞周期のどの時期に位置しているかを反映しているのではないかと推測される。腎癌の臨床検体でもこの抗体を用いてまず、凍結切片を用いて免疫組織染色を行った。検体間のばらつきはあるものの、おおむね癌細胞は、やはり核および一部細胞質と思われる部分にも発現しているように思われた。正常組織においてはこれらの発現は腫瘍部分と比較して有意に発現強度は低く、やはり細胞増殖との関連を思わせるのもであった。発現の正確な定量には、免疫組織染色法よりWestern blotの方が優れているが、Western blotを行うには核タンパクの抽出操作が必要となり、手技的にかなり難しくなるという問題がある。従って、正確性には欠けるが、発現量の検討には免疫組織染色の結果を(-),(±),(1+)〜(2+)まで4段階にScore化して行うことにした。また、凍結検体は量的に少ないので、現在、この抗体がパラフィン包埋組織でも染色可能かどうか調べている。その一方で、mRNAの発現を見るため、RT-PCRによる発現の検討も行っている。発現量は腫瘍細胞の増殖速度や悪性度と関連しているようである。
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