研究概要 |
ヒトの核マトリックスタンパクHMGI(Y)に対する抗体は現在、Santa Cruz社から市販されているもののみである。まず最初に、ヌードマウスに移植された前立腺癌細胞株PC3のXenograftを用いて免疫組織染色を行った。この細胞株はすでに申請者らが、抽出核タンパクを用いてのWestern blotにおいてHMGI(Y)の発現を確かめているものである。結果は、核マトリックスタンパクではあるが、細胞質内にもわずかに染色が認められた。核内においては、顆粒状の染色像を示すものや、Homogenousな染色像を示す細胞が混在していた。腎癌の臨床検体でもこの抗体を用いて、凍結切片を用いて免疫組織染色を行った。正常組織における発現強度は腫瘍部分と比較して有意に低かった。発現の正確な定量には、免疫組織染色法よりWestern blotの方が優れているが、Western blotを行うには核タンパクの抽出操作が必要となり、手技的にかなり難しくなるという問題がある。そこで、発現の定量化をタンパクではなく、mRNAで行うこととし、Real-time PCRを行った。4種類の腎癌細胞株(OUR-10,NC65,Caki-1,ACHN)においては全て164bpの予想通りのサイズのPCR productが得られた。また、凍結腎癌組織を用いて38例について検討した結果、正常部分に比べて癌組織(原発巣)の方が発現レベルは高い傾向を示した。また、癌組織における発現ではhigh stageの方がlow stageより発現が高い傾向を示した。Real-time PCRによる原発巣おけるHMGI(Y)の発現は、遠隔転移、リンパ廟転移の有無、組織学的悪性度とは相関を示さなかった。原発巣癌組織における高発現症例は低発現症例より統計学的には有意ではなかったものの、予後不良の傾向を示した。
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