研究課題
基盤研究(C)
九州沖縄の各大学および関連施設における多施設の症例を集計し、腎血管筋脂肪腫の臨床的検討を行った。1998年1月1日から2002年12月31日までに受診した初診患者で、組織学的に又は画像診断にて腎血管筋脂肪腫と診断された症例を調査した。1)調査した5年間にAMLと診断された症例は267例290腎で、男性67例(25.0%)、女性200例(75.0%)、男女比1:3であった。年齢は20〜86歳に分布し、平均年齢は男性53.3歳、女性52.1歳であった。AMLの人口10万人当たりの発生率は0.36人/年程度であった。2)腫瘍部位に左右差なく、両側例は9%であった。片側例では単発例が96.7%両側例では3個以上が78.3%であった。初診時自覚症状・他覚所見では偶発例が73.8%と最も多く、疼痛12.7%、血尿9.4%であった。AMLの破裂は267例中16例(6.0%)に発症し、出血性ショックは破裂例の21.4%に認められた。3)非破裂AMLにおける腫瘍最大径の平均は2.9cm(分布0.5〜25cm)、破裂AMLにおける腫瘍最大径の平均は9.1cm(分布3〜24cm)で、有意に破裂AMLの腫瘍径が大きかった。腫瘍径が大きくなるにつれ、症状を有する症例の頻度が増加していた。4)TSは267例中22例(8.2%)に認められ、TS合併例の年齢はTS非合併例に比べ有意に低く、症状はTS合併例がTS非合併例に比べ有意に高かった。5)非破裂AML268腎の初回治療は経過観察(75.4%)、腎摘除術(10.5%)、腎動脈塞栓術(7.8%)、腎部分切除・腫瘍核出術(6.3%)となっていた。破裂AML16腎の初回治療法は腎動脈塞栓術が43.8%.腎摘除術が37.5%に施行された。6)腫瘍径4cmを境に症状を伴う症例が増加し、腫瘍径4cmを目安とする治療方針は妥当だと思われる。しかしTSを伴った両側多発性の症例にはそのまま適応できない場合がある。AMLの治療においては個々の症例に応じた治療方針を検討する必要がある。7)AMLに対する腎動脈塞栓術は破裂症例を含む有症状例の治療として有効であった。また栄養動脈塞栓術により腫瘍径の縮小が高率に認められ、無症状例でも塞栓術を行なうことは出血や腫瘍増大の予防なると思われる。特にAML多発例、全身状態不良例においては有用な治療法である。
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西日本泌尿器科 68巻10号
ページ: 466-473
Nishinihonhinyokika 69(10)
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