研究課題
基盤研究(C)
(目的)近年増加傾向にある膀胱癌は表在性腫瘍であっても非常に再発しやすく、また再発を繰り返すことにより次第に悪性化してくる。そこでわれわれは、膀胱癌の進展に関与する遺伝子群を検討するためにDNAマイクロアレイ法を用いて膀胱癌の浸潤性に関連する遺伝子群の同定を試みた。また癌抑制遺伝子のp16INK4aとp14ARFのプロモーター領域のメチル化が膀胱癌の進展とどのように関わっているかについても検討した。(方法)平成13年より平成17年までに当施設および関連施設にて膀胱癌の診断で手術を受けた84名の患者(表在癌50名、浸潤癌34名)より文書での同意取得後、標本を解析した。このうち14検体については約3万遺伝子プローブが搭載されたオリゴアレイにてDNAマイクロアレイ解析を行った。さらに定量的PCRで遺伝子量と浸潤性の相関を比較した。さらに特徴のある遺伝子・蛋白については、免疫染色を行い蛋白発現についても検討した。DNAメチル化についてはメチル化特異的PCR法(MSP)と直接塩基配列決定により確認同定した。(結果)DNAマイクロアレイでは21遺伝子で発現上昇がみられ、18遺伝子で発現低下がみられた。これらの中で、われわれは定量的PCRで浸潤性と特に相関にみられる2つの細胞周期関連遺伝子に注目した。すなわちS-phase kinase-associated protein 2(SKP2)とcyclin-dependent kinase subunit 1(CKS1)であり、これらは協調して癌抑制遺伝子のp27のユビキチン化、さらに蛋白分解を促進することが知られている。これらの遺伝子発現は臨床病期と腫瘍異型度と相関し、p27の発現と逆相関することがわかった。さらにこれらの2つの蛋白発現は類似のパターンを示すこともわかった。回帰分析ではSKP2のmRNA発現はp27発現の負の予測因子となりうることがわかった。またKaplan-Meyer解析ではこれらの2つの遺伝子のいずれかが高発現している患者では予後不良であることも示された。癌抑制遺伝子のp16INK4aとp14ARFのメチル化解析では、表在癌に比べ浸潤癌では有意にp16INK4aとp14ARFのメチル化の率が高く、Kaplan-Meyer解析でもp14ARFのメチル化を有する患者は持たない患者と比較して有意に予後不良であることが示された。(結論)細胞周期の発現調節に関係するSKP2とCKS1の発現レベルや癌抑制遺伝子のp16INK4aとp14ARFのメチル化解析は膀胱癌患者の予後予測や治療法決定に有用である可能性がある。
すべて 2006
すべて 雑誌論文 (5件)
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