研究概要 |
アセチルコリン合成酵素(ChAT)がラット膀胱上皮細胞に発現していることを抗ChAT抗体(AB144P, Chemicon)を使い免疫組織学的に確認した。その発現程度を閉塞膀胱ラット、卵巣摘出ラットと比較したが免疫染色では相違を認めなかった。ムスカリニックレセプターもラット膀胱上皮細胞に発現していることを免疫組織学的に確認した。サブタイプ別ではM1、M2、M3、M5の発現が見られ明らかな発現の違いは認めなかったが、M2、M3の発現が強い傾向があった。上記病的モデルでの発現の違いは免疫染色では明らかでなかった。正常ラットに抗コリン剤oxybutynin、サブタイプ別アンタゴニストの溶解液で連続的膀胱内圧測定すると生理食塩水を使った時に比べ排尿時最大膀胱内圧には影響与えず、排尿間隔の延長と膀胱容量の増加を示した。排尿間隔を有意に短縮させるようなデータは得られなかった。そこでアセチルコリンとムスカリニックレセプターの蓄尿期での求心性神経路に対する影響を検討した。膀胱刺激に対して腰髄6番目のc-Fosが活性化されることを利用しoxybutyninとアセチルコリンエステラーゼインヒビターedrophonium投与によるc-Fos発現の変化と膀胱機能の変化を検討した。Oxybutynin投与によりc-Fos発現は有意に低下し、edrophonium投与によりc-Fos発現は有意に増加した。同時にedrophoniumは排尿時最大膀胱内圧に影響を与えず排尿間隔を短縮した。また加齢ラット、加齢卵巣摘除ラットで同様に見ると卵巣摘除により排尿間隔は短縮しc-Fos発現は有意に増加したがこれらの効果はoxybutynin投与で抑制されたことからアセチルコリンはムスカリニックレセプターを介して膀胱からの非侵害刺激を蓄尿期に中枢へ伝達する重要な役割を担っていると考えられた。
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