研究課題
1.前年度には嚢胞形成の進展に伴い、腎内CLC-Kの発現が減弱し(northern blot analysis)、嚢胞腎上皮細胞のbasolateral sideにおける染色性も低下すること(免疫組織染色)、そしてクエン酸を同時投与することにより嚢胞形成の有意な抑制が認められ(NIH image analysis)、腎内CLC-Kの発現が増強することを観察した。2.今年度は主に嚢胞腎における結石形成の機序に関する検討をラットをモデルに進めた。(ア)嚢胞腎は正常腎に比較し、結石誘発物質(ethylene glycol)に過度に反応し、結晶形成が容易に生じた。(イ)結石形成に関与する高分子物質(osteopontin)の発現は嚢胞腎において増強し、嚢胞上皮細胞内に多量に存在することが認められた。(ウ)嚢胞上皮細胞におけるNaDC-1のapical sideへの局在変化を認めた。(エ)嚢胞腎では低クエン酸尿、高カルシウム尿が認められた。(オ)クエン酸の投与により結晶形成は抑制された。(カ)またクエン酸により腎内CLC-Kの発現増強の他、osteopontinの発現低下もみられた。3.以上より、腎内CLC-Kの発現低下による分泌亢進は嚢胞形成の主要な要因であり、これに伴って生じる高カルシウム尿、またNaDC-1のapical sideへの局在変化によってもたらされる低クエン酸尿は嚢胞腎における結石形成の重要な要因と考えられた、クエン酸はCLC-Kの発現を正常化し、また、osteopontinの発現を低下させることなどにより、嚢胞形成、結石形成を抑制することが示唆された。
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Iournal of Tokyo Women's Medical university 76,3
ページ: 114-121