胎児泌尿生殖洞の間質を雄マウスの膀胱上皮直下に移植しておくと、多くの部位では扁平上皮の過形成が観察されたが、一部では前立腺様の腺構造が誘導された。この腺構造をとる部位を抗前立腺上皮モノクローナル抗体で免疫染色すると、上皮は陽性に反応した。このことは前立腺の間質で誘導されたin situの膀胱上皮の一部は、形態的にも機能的にも前立腺上皮に変化していることを示している。同様の実験として、胎児泌尿生殖洞の間質を発情前の雌マウスの子宮腔内に移植しておくと、その部位の上皮が膣上皮化することを確認した。また異種であるラットの泌尿生殖洞間質をヌードマウスの前立腺内に移植しておくとマウス前立腺上皮の過形成が観察できた。細胞の由来はラットあるいはマウスと特異的に反応する抗体により識別した。 また、マウス前胃の間質を膀胱上皮直下に移植した場合においては、間質移植部位の上皮は過形成を示した。さらに移植間質の方へ誘導された上皮の一部の形態は、前胃の上皮でもなくまた膀胱上皮でもない小さな腺構造をとる上皮が形成されてきた。このような現象は移植間質と本来の膀胱間質の二つの間質から同時に多数の情報が上皮に与えられる事により、上皮に混乱が生じたのではと推測される。あるいは発生学的にもかなり離れた異なる臓器の間質の刺激では、上皮に異常増殖が引き起こされるとも考えられる。 これらの実験により、臓器本来の間質以外の間質の誘導刺激により、お互いの臓器の発生が近ければ、誘導を受けた上皮は誘導間質の上皮に類似したものに変化しうるが、臓器の発生が離れていれば、お互いの臓器とはまったく異なった第三の上皮になりうることが示唆された。
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