上皮性卵巣癌組織でのcarbonyl reductase(CR)の低発現あるいは欠如とVEGF-A、VEGF-C、VEGF-Dの高発現は卵巣癌の予後不良因子であること、腫瘍組織内でのCR発現とVEGF-A、VEGF-C発現は逆の関係にあることを認めた。CRはProstaglandin(PG)E_2を不活化するPG 9-ketoreducatseと同一である。マウス卵巣癌細胞にCR sense cDNAとCR antisense cDNAを導入したtransfectantを作成しCR発現とVEGF familyの発現の関係を調べた。1)sense CR発現ベクターとantisense CR発現ベクターを作成し、リポフェクション法にてマウス卵巣癌細胞T-Ag-MOSEに遺伝子導入した。2)sense CR導入細胞(sCR)とantisense CR導入細胞(asCR)でCR発現とVEGF family(VEGF-A、VEGF-C、VEGF-D)発現、VEGF受容体(Flt-1、Flk-1、Flt-4)発現の関係をWestern blot法にて調べた。3)sCR細胞とasCR細胞の培養上清中のPGE_2濃度をELISA法で測定した。結果として1)sCR細胞ではCR発現は著増しasCR細胞ではCR発現は低下していた。2)VEGF-Aの発現はsCR細胞に比べasCR細胞で発現が増加していた。VEGF-CとVEGF-D、VEGF受容体については両細胞間で発現に明らかな差異は見られなかった。3)PGE_2濃度はsCR細胞に比べasCR細胞で高値であった。以上からCRはPGE_2を介して特にVEGF-A発現に関与している可能性が示唆された。ClofibrateはCR発現を増強させる。
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