近年、組織特異的な分子発現における転写調節にはゲノムDNAのエピジェネティクな変化が重要な役割を果たすことが明らかになってきた。また遺伝子のエピジェネティクな変化は、環境因子を含めた後天的な諸要因で容易に影響され得ることから、臨床医学的にもこの遺伝子の変化と生活習慣病や難治性疾患との関連が注目され始めている。本研究では、受精・初期発生における雌性生殖管内の機能分子の生体内の働きを追求する事を最終目的とし、その前段階として、現時点で行われている配偶子・受精卵体外培養技術がそれらの細胞に与えるエピジェネティクな影響を、特にCpGアイランドのメチル化を指標にして生体内(卵管内)の環境との比較し得るか検討した。RLGS法によるCpGアイランドのメチル化、特に組織依存的にメチル化される領域(T-DMR)のデータベースよりプライマー設定し、PCR法を用いて生殖細胞のゲノムの増幅条件設定を試みた。一匹のマウスより得られる卵は自然排卵では排卵処理を行わないと10-20個しか回収されない為、アガロースビーズ法によるsingle cell PCR法の確立を目指した。この結果、微小細胞サンプルからのゲノムDNAの調整及びPCR検出については、100個/2μlの試料を用いてのPCR法を確立した。100個/2μl以下の微小サンプルにおいては、nested PCRを行う必要があり、プライマー選択の重要性が示唆された。これらの結果はCpGアイランドのメチル化を検出するためにはマウス一群を5-10匹に設定することでデータを得られると思われ、in vivoとin vitroにおける生殖細胞、特に卵を評価する方法として有用と思われる。さらにこれらの予備データを応用する候補遺伝子として、生殖細胞待異マーカー分子であるTEX101遺伝子のモーター領域の構造をCpGアイランドの有無を含め詳細に検討した。
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