研究概要 |
最近FSH受容体の変異体により、spontaneous OHSSを起こすことが明らかとなり、変異FSH受容体がhCG/LHとの反応性を獲得したことによりOHSSが発症するメカニズムが明らかとなってきている。フランスのRodienらにより第3膜貫通部位のThr449Ileの変異FSH受容体(N.Engl.J.Med.349:753-9,2003)が原因部位である症例を報告している。またVassartらは第3細胞内ループのAsp567AsnがOHSSの原因である症例を報告している(N.Engl.J.Med.349:760-6,2003)。これらの2つの報告によると、FSH受容体の変異部位は一定でないことが明らかとなった。すなわち、FSH受容体のどの部分がOHSS発症に関与しているか明らかでない。現在、不妊外来受診中の患者さんの血球よりDNAを抽出し、FSH受容体の10番目のシークエンス解析を行っているが、以前に報告されているような変異は発見されていない。今後もFSH刺激に対して、反応性の特に良かった症例のFSH受容体の解析を続ける予定である。さらに、FSH作用のみで、排卵が生じるかについても意見が異なっているので、LH作用の特異性を知るためにもFSH受容体とLH受容体の構造上の共通性と特異性を明らかとする必要がある。特に、FSH、LH共にセカンドメッセンジャーがcAMPと報告されているので、FSH、LH作用の特異性、特にLH作用の排卵、卵成熟における細胞内伝達系を明らかとするため、FSH受容体とLH受容体のキメラを作製し、FSH作用の特異的部位を明らかとする予定である。
|