研究概要 |
加齢等に伴う卵・卵巣機能低下に酸化的ストレスが関連しているとの仮説の元に、抗酸化剤の投与によって卵巣機能の改善がなされるか否かについての検証を試みることを本研究の目的とした。基礎的研究として、まず抗酸化剤を投与した際に、薬剤が卵巣局所に移行するかについての検討を行った。なお、抗酸化剤としてはコエンザイムQ10(CoQ10)とビタミンC(vitC)を選択した。3カ月齢,6カ月齢,10カ月齢の雌マウスに、水溶性CoQ10(4μg/g・weight》及びvitC(40μg/g・weight)を、各々4週間にわたり投与を行った。4週間の投与後に、各群の全てのマウスについて、血中及び卵巣組織中のCoQ10濃度を計測した。その結果、CoQ10単独投与群及びCoQ10とvitCの併用群では、対照群・vitC単独投与群と比べて、血中・卵巣組織中共にCoQ10濃度は有意に高値であった。以上から、CoQ10を経口投与した場合に、卵巣組織へ本物質が移行することが確認された。また、月齢間で血中濃度と卵巣組織濃度との比(移行率)に差は認められなかった。 次に、投与した薬剤の生物学的作用を観察する目的で、(1)マウス血清中の酸化ストレス及び抗酸化能の測定、並びに(2)卵巣重量の比較を行った。(1)については、FRAS-4システムを用いて測定した。その結果、CoQ10単独投与群・vitC単独投与群・併用投与群のいずれにおいても、血清酸化ストレス値(d-ROMs)は対照群と比較して10-20%程度低下していた。一方で、抗酸化能(BAP)に関しては、いずれの群においても差はみられなかった。また、(2)については、CoQ10単独投与群・vitC単独投与群・併用投与群のいずれにおいても、卵巣重量は対照群と比較して20-30%程度高値を示した。以上の結果から、抗酸化剤(CoQ10まはvitC)の投与により血清酸化ストレスは低下し、卵巣重量は増加することが確認された。
|