研究概要 |
【目的】子宮内膜症の進展には好中球や肥満細胞による炎症が関与すると考えられており、これらの細胞由来の各種セリンプロテアーゼ(SP)をリガンドとするPAR2の活性化が子宮内膜症の病態に関与すると推測される。本研究では子宮内膜症間質細胞(ESC)のPAR2の作用について、PAR2特異的アゴニストペプチド(PAR2AP)とESC培養系を用いて検討した。 【方法】同意のもと手術時に採取した子宮内膜症性卵巣嚢胞壁より分離培養したESCにPAR2APを添加し、炎症性サイトカインIL-6、IL-8分泌をELISA法で、細胞増殖能をPCNAの免疫染色法、BrdU取り込み法および細胞数計測で評価した。また、mitogen-activated protein kinase(MAPK)のリン酸化作用をWestern blot法で調べた。さらに、同意のもとボランティアから採取した末梢血から好中球を分離培養し、好中球培養上清(N-sup)をESCに添加しPCNA免疫染色を行った。 【成績】PAR2AP添加(300μM)によりESCからのIL-6とIL-8分泌は有意に増加した(各々8.4倍,2.3倍)。またPAR2AP添加(30μM)により、PCNA陽性細胞の割合(P-rate)、BrdU取り込み能および細胞数は有意に増加した(各々2.3倍,1.4倍,1.24倍)。PAR2APにより3つのMAPK(p38,ERK, JNK)のリン酸化が認められた。また、3つの経路のMAPK阻害剤をPAR2APと同時添加するとPAR2APによるP-rate増加作用が抑制された。N-sup添加によりP-rateは有意に増加した(1.6倍)が、SP阻害剤aprotinin添加によりその増加作用は抑制された。 【結論】本研究により好中球由来のSPによるESC増殖作用やPAR2活性化によるESC増殖や炎症の促進作用が示され、好中球を含む炎症細胞由来のSPがPAR2活性化を介して子宮内膜症の進展に作用する可能性が示唆された。
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