研究概要 |
1)炎症と早産 妊娠20週から24週の期間に子宮頚管長の計測と頸管粘液中IL-8値の測定を行い、妊娠中期の子宮頚管粘液中IL-8高値,および子宮頚管長の短縮が早産のリスク因子になりえることが判明した。また,頚管長短縮例の中でも頚管中IL-8値が高値の症例では早産率が高く、IL-8高値症例に頚管縫縮術を行うとむしろ早産率を増加させることを報告した。妊娠20週から24週までの妊婦を対象とした膣内細菌の検討で,膣分泌物中にラクトバチルス属が検出されない症例で頚管中のIL-8濃度が高値であることが判明した。頚管中のIL-8値は早産マーカーとして有効であるが,IL-8値と相関する,より簡便で安価なマーカーを見い出す必要性がでてきた。頚管粘液タッチスメアーによる顆粒球数はIL-8値と有意な性の相関を示し、IL-8値と同等の早産予知能を有することを明らかにした。 2)炎症と妊娠高血圧症候群 末梢血単核球培養上清中のIL-18値、IL-12値を測定し、妊娠高血圧症候群では正常妊婦に比しIL-18/IL-12比が低下していることを明らかにした。さらに血清中の血清中のGranulysin値は妊娠高血圧症候群で上昇し、さらにTh1/Th2とよく相関することから妊娠高血圧症候群のマーカーとなりえることを報告した。妊娠高血圧症候群の着床部(extravillous trophoblast)ではTh1優位になっているのみならず、炎症に深く関与している制御性T細胞も減少しており、さらに自然免疫に重要で,炎症に重要な役割を果たすToll-like receptor(TLR)ならびにNF-kBを介した慢性炎症が存在しており、制御性T細胞の機能も抑制されていることが判明した。
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