研究概要 |
1:子宮頸癌は一般的に放射線感受性が高く有効な治療手段である。しかし放射線照射によって大部分がアポトーシスになる一方で転移能が亢進する細胞が存在し、これが引き続きリンパ節や肺などの遠隔臓器転移を起こすと言われている。本年度はこの放射線照射による転移能の増強にAPN/CD13が関与しこの阻害が放射線感受性増強に働くことを見いだした。具体的には1)実際のヒトの頸癌組織において放射線照射によってAPN/CD13発現が増強することを免疫組織染色にて確認した。2)子宮頸癌細胞にX線を照射すると一部の細胞はアポトーシスの系へと動くがまた他方の細胞はAPN/CD13の発現を増強させ浸潤能を亢進させるという結果を得た。3)放射線(X線)照射に際してAPN/CD13の阻害剤であるベスタチンで子宮頸癌細胞を処理すると細胞浸潤能は有意に抑制された。また、同様の系でアポトーシスの増強効果を確認した。4)in vivoの系としてヌードマウスを用いて子宮頸癌細胞の皮下腫瘍モデルを作成した。このマウスに放射線を外照射するとベスタチン投与群(腹腔内投与)では非投与群と比較して有意に腫瘍増殖能は阻害された。この結果から1)子宮頸癌の一部の細胞は放射線照射によってAPN/CD13発現を亢進させよりinvasive, anti-apoptoticの方向にシフトする。2)ベスタチンはこの方向を逆行させることによって放射線感受性の増強と転移抑制に寄与することが判明した。(柴田,梶山,吉川) 2:また、今年度は卵巣癌のパクリタキセル耐性でAPN/CD13の増強とDPPIV/CD26の低下がリンクして起こることを見いだした。また、増強したAPN/CD13をベスタチンによって阻害すると逆にパクリタキセル感受性が回復することをin vitro, in vivoの両系で見いだした。(梶山,井箟)
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