研究概要 |
本研究期間に我々は数種類の膜結合型プロテアーゼ(aminopeptidase ; AP)に着目し,子宮癌や卵巣癌の進展における関与とそれらを分子標的とした新規治療法の可能性について検討を行った。APとしてAPN/CD13,DPPIV/CD26,IRAP/PLAP, NEP/CD10及びaminopeptidase A(APA)の5種類の分子を対象として以下の知見を得た。1)卵巣癌細胞においてDPPIV/CD26とNEP/CD10の発現が細胞浸潤性の低下,paclitaxelに対する感受性増強,さらにin vivoにおける腹膜転移能の減少を誘導した。2)特にDPPIV/CD26は間葉上皮形態転換作用があることを明らかにした。3)その分子メカニズムとして転移元進や薬剤耐性を促すSDF-1αやエンドセリンなどの基質を負に制御することを明らかにした。4)逆に卵巣癌におけるAPN/CD13の発現は高浸潤性とpaclitxel耐性とリンクし、阻害剤であるbestatinやsiRNAによってAPN/CD13を抑制するとpaclitaxel耐性の解除と腹膜転移能が現弱し動物実験では予後の改善に寄与した。5)同様に子宮頸癌の放射線照射に伴う転移促進にもAPN/CD13の発現増強が関与しており、bestatin処置によって転移浸潤抑制とアポトーシス増強効果が確認できた。6)子宮体癌の薬剤耐性、特にcarboplatinやpaclitaxel耐性にIRAP/PLAPの発現増強が関与しており、siRNAによる抑制が薬剤感受性を回復させた。7)APAの基質としてangiotensin-II (A-II)があげられるがA-IIがATRlを介して卵巣癌の血管新生や腹膜播種増加に促進的役割を担っていること、ATRlアンタゴニストがその効果を抑制したことによって新規治療法として応用できる可能性が示唆された。
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