二段階胚移植の有用性に関する検討:滋賀医科大学産婦人科および埼玉医科大学総合医療センターの両方の施設において以下に記載したようなプロトコールに従ってヒト体外受精胚移植プログラムを遂行し、その臨床上の有用性を、受精率、卵割率、平均移植胚数、妊娠率、胚着床率、流産率、新生児異常の発生率、多胎率、卵巣過剰刺激症候群(OHSS)の発生率、患者年齢分布、平均年齢、体外受精の既往回数等のパラメーターについて比較検討し、これを従来おこなわれていた一段階胚移植法の成績と比較検討した。ヒト体外受精胚移植法のプログラムは以下のごとき手順を予定している。前周期黄体期7日目よりGnRHアゴニストを600mg/日で開始、採卵予定日の11日前よりFSH 225IU/日で連日注射開始、Day 12に採卵する。媒精および胚培養をP1+10% SSS液でおこない、Day2およびDay5に胚移植を経腹超音波ガイド下におこなう。なお、これらの臨床成績の一部はすでに今年度末に研究発表会(第9回滋賀不妊診療懇話会)をおこない、プログラムの計画等に関する修正などをおこなった。胚由来低分子因子の検索と同定の研究は共同研究者の竹林浩一講師、木村文則助手がLC-Mass Spectrometryをおこない、分子量3000以下の分画について胚由来因子の分離、検出とフラグメンテーションパターンから推定される分子量・分子構造を決定した。我々は既に胚盤胞に発現している遺伝子群をgene tipを用いて解析し、報告してきたが、今回の実験ではさらに、胚依存性に子宮内膜から発現誘導される遺伝子群をヒトの系およびマウスの系の両方で解析した。これらの成果の一部はすでに第56日本産科婦人科学会学術集会でも報告した。
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