研究概要 |
子宮内膜症患者腹水中に高濃度存在するInterleikin-8(IL-8)とTumor necrosis factor α(TNFα)は内膜症由来の培養間質細胞の増殖を促進することを明らかにした.TNFαは子宮内膜症由来の問質細胞からのIL-8およびIL-6遺伝子の発現と蛋白産生を濃度ならびに時間依存性にup-regulateすること,この作用は転写因子であるNFκBを介することを明らかとした.本研究では,サイトカインシグナル伝達の主要分子であるNFκB発現を指標として,NFκB阻害剤、サイトカインRNA阻害剤および性ホルモンの影響について内膜症細胞を用いて基礎的検討を行った. 子宮内膜症細胞にTNFαを添加すると,5分後にはI-kBのリン酸化が発現した.TNFα添加によるIκB蛋白のdegradationをWestern blottingにて、NFκBの活性化をEMSAにて示した.NFκB阻害剤であるTPCKを前投与するとTNFαによるIL-8およびIL-6産生誘導が抑制された.IL-8RNA阻害作用を有するアンチセンスを添加すると、TNFαによるIL-8産生が抑制され細胞増殖促進作用も中和された。子宮内膜症間質細胞のIL-8産生に対するestradiol(E2), progesterone(P4), danazol(Da)およびプロゲステロン誘導体であるdienogest(Di)の影響について検討した.TNFα(0.1ng/ml)とE2(10^<-7>M)存在下に,P4(10^<-6>M),Da(10^<-6>M)またはDi(10^<-7>M)を添加して24時間培養した.子宮内膜症間質細胞におけるIL-8およびIL-6遺伝子および蛋白発現をNorthern blot法とELISAで,NF-κB活性をEMSAにて検索した.P4,DaおよびDiの添加は,TNFαとE2によって誘導されるNF-κBの活性化とIL-8およびIL-6遺伝子発現を減弱した.P4,DaおよびDiの添加は,TNFαとE2によるIL-8およびIL-6蛋白産生を有意に低下させた.本研究成績から,P4,DaおよびDiはNF-κB活性を減弱することで内膜症細胞の増殖を抑制する可能性が示された.
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