研究概要 |
卵巣癌におけるc-myc遺伝子と化学療法感受性,予後との関連について検討した.化学療法後のAIとARF LIは増加し,Ki-67 LIは減少した.またc-myc遺伝子発現量とARF LIの間には有意な正の相関が得られた.これらのことからc-myc遺伝子はARFを介する化学療法誘導性アポトーシスに関与することが示された.化学療法有効例でc-myc遺伝子発現量が有意に高く,c-myc遺伝子発現量200以上の症例で化学療法奏効率は高かった.c-myc遺伝子は化学療法感受性に関与することが示唆された.c-myc遺伝子発現量200以上の症例の予後は良好であり,多変量解析ではc-myc遺伝子発現量が独立予後因子となった. 以上の成績からp53遺伝子異常の有無に関わらず,c-mycはARFを介してアポトーシスを誘導し,c-myc遺伝子発現量は上皮性卵巣癌の化学療法感受性に関与することが明らかとなった. 上皮性卵巣癌における耐性遺伝子を用いた抗癌剤感受性試験の有用性を検討した.腫瘍組織からRNAを抽出し,MDR-1,Topo IおよびTopo IIαの遺伝子発現量をreal-time RT-PCR法を用いて測定した.化学療法の効果を指標として,ROC曲線を用いて各遺伝子発現のcut-off値を算出した.化学療法の奏効率はTJ療法で59.0%,EP療法で31.8%,CPT-11/CDDP療法で30.0%であった.遺伝子発現のcut-off値は,TJ療法に対してMDR-1が80,EP療法に対してはTopoIIαが90,CPT-11/CDDP療法に対してはTopoIが200であった.TJ療法に対する正診率は69.2%であり,EP療法で80.0%,CPT-11/CDDP療法で61.1%であった.上皮性卵巣癌において耐性遺伝子による抗癌剤感受性試験の有用性が示唆された.
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