研究概要 |
まず野生型p53の子宮頸癌における役割をHPV陽性である子宮頸癌由来細胞を用いて検討した。SiHa細胞にHPVの初期転写蛋白であるE6を、HeLa S3細胞にE2を一過性に遺伝子導入したところ、SiHa細胞ではp53蛋白の減少とIGF-Iレセプター蛋白の増加を、そしてHeLa S3細胞ではp53蛋白の増加とIGF-Iレセプター蛋白の減少を認めた。それぞれの恒久的遺伝子発現クローンを作成して検討したところ同様の事象を確認できた。ルシフェラーゼアッセイにて、このIGF-Iレセプター蛋白発現量の変化は転写制御による事を確認した。またE6/E2遺伝子導入によるIGF-Iレセプター発現量の変化により軟寒天培地での足場非依存性増殖能やヌードマウス皮下移植での腫瘍形成能は大きく変化しており、生理的な範囲でのHPV感染によるIGF-Iレセプター発現量の変化が子宮頸癌細胞の前述の悪性度に関与していることが示唆された。 次に子宮頸癌や異型上皮の臨床検体を用いて、IGF-Iレセプターの発現量とそのチロシンリン酸化を免疫組織染色にて検討した。IGF-Iレセプター発現量はCINIII以上で有意に亢進し、またそのリン酸化は病巣の進展と共に有意に亢進していた。また異型上皮病変において、その基底細胞や労基底細胞のIGF-Iレセプター発現はCINIIIでは明らかに亢進しており、HPVの染色体組み込みによるE6蛋白の異常発現を反映していると考えられた。 そしてhot spot mutationを主とした様々な変異p53発現ベクターをsite directed mutagenesisにて作成し、そのIGF-1レセプター発現調整に及ぼす効果を比較検討した。内因性p53を有しない卵巣癌由来SKOV-3細胞と骨肉腫由来Saos-2細胞を用いて検討したところ、野生型p53やP72R、V143AはIGF-1レセプターの転写を強力に抑制した。一方、T123A, R175H, R248Q, R273Hには転写抑制効果は認められなかった。
|