研究概要 |
(研究目的)従来から使用されている結合型エストロゲン(CEE)の0.625mg/日は血管炎症マーカーの高感度CRPや血清アミロイド蛋白A(SAA)などを増加するのみならず,線維性被膜を溶解する蛋白分解酵素であるmatrix metalloproteinase(MMP)を上昇し,その抑制因子であるtissue inhibitor of MMP(TIMP)を低下させ、血管炎症に促進的に作用してプラークの破綻に密接に関与する可能性がある。しかし,CEEの経口投与を低量化することで,これらの悪影響を抑制できる可能性がある。(方法)閉経後女性を対象とし,CEE 0.625mg/日と0.3125mg/日を3ヶ月間投与する群と薬剤を投与しないコントロール群の3群において,投与前後で血管炎症マーカーである高感度CRP,SAAさらにはMMPやTIMP-1に与える影響を比較した。さらにエストロゲンの内皮機能改善作用が低用量エストロゲンでも認められるかも検討した。(結果)コントロール群ではいずれのマーカーも変化しなかった。CEE 0.625mg群では高感度CRP、SAA、MMPは上昇し,TIMP-1は低下した。CEE 0.3125mg/日群ではSAA、MMPは変化せず、高感度CRPは低下し、TIMP-1は逆に上昇した。両群ともに内皮機能は有意に改善した。(結論)経口エストロゲンを低用量化することで,内皮機能改善作用を温存しつつ、血管に対して抗炎症作用を有する可能性が示され、動脈硬化に抑制的に作用する可能性が示唆された。
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