研究課題
胎盤特異的遺伝子発現とエピジェネティクスを指標とした、母体血漿中DNAおよびRNA定量化の胎盤機能評価への臨床応用の可能性を追求した。以下の二点を年度内の明確なターゲットとして検討した研究成果の概要を報告する。1.胎盤特異的に発現する遺伝子について、妊娠中の胎盤機能をモニターする分子マーカーとしての可能性を探る。・母体血漿中胎盤由来mRNAの定量化:胎盤特異的遺伝子として、hPL遺伝子およびhCG遺伝子に着目した。hPLmRNA量は妊娠経時的に増加し、一方のhCGmRNA量は妊娠12週をピークとして減少傾向にあった。これらの経時的変化は、hCG蛋白レベルの妊娠経過に伴う変化と類似していた。・胎盤由来mRNA定量化の臨床応用穿通胎盤への応用:本例では膀胱へ浸潤した穿通胎盤を認め、帝王切開時における一期的な子宮摘出が困難であった。初回手術後に胎盤及び子宮頸部が残存したため、化学療法を施行した後に、二期的に子宮摘出術を施行した。私どもは、本例の臨床経過における胎盤由来mRNA(hPLmRNAおよびhCGmRNA)レベルの経時的変化を定量的リアルタイムRT-PCR法でモニターすることが可能であることを報告し、母体血漿中胎児mRNAの定量化が胎盤機能を推察する新たな分子マーカーである可能性を示唆した(Masuzaki and Miura et al.,2005)。絨毛性疾患への応用:絨毛性疾患の病態は様々であるが、いずれもhCG蛋白レベルを腫瘍マーカーとして管理されることに共通点がある。そこで、臨床的絨毛癌症例に対して、子宮内掻爬術および化学療法の前後に採血を行い、定量的リアルタイムRT-PCR法で患者血漿中hCGmRNAレベルの変化をモニターした。その結果、hCGmRNAの定量化は、hCG蛋白レベルの定量化と比較して、よりリアルタイムに病状を反映している可能性が考えられ、hCGmRNAレベル定量化の絨毛性疾患における新たな分子マーカーとしての可能性が示唆された(Masuzaki and Miura et al.,2005)。2.ヒトゲノム刷り込み遺伝子H19のDNAメチル化状態を検証し、妊娠初期の胎児におけるエピジェネティクスを非侵襲的に観察するマーカーとしての意義を調査する。:H19遺伝子の親特異的メチル化領域内に存在するA/G遺伝子多型を挟み込むようにメチル化特異的PCRプライマーを設計し、bisulfate処理したPCR増幅産物をシークエンスしてメチル化アレルの両親由来を区別した。2組の胎児内胎児のDNAを解析した結果、それぞれのメチル化状態は様々であり、本奇形の発生には妊娠極初期の一卵性多胎の取り込みが関与していると示唆された(論文投稿中)。本法を母体血漿中DNAの解析に応用することにより、妊娠極初期の胎児のメチル化状態を評価することが出来る可能性が考えられた。
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