本研究では、子宮頸癌、異形成例、健常女性の子宮頸部に感染しているHPVの塩基配列を決定することでHPV型やバリアントの網羅的解析を行った。 1.High Risk型・バリアントの同定 子宮頸癌、異形成例、健常女性かち検出されたHPVは31種類、そのうち18種類をHigh Risk型と分類した.検出された31種類のHPVのうち26種類にバリアントが存在した。この26種類のうち21種類では浸潤癌に検出されるバリアントと健常女性から検出されるバリアントが混在していた。これら21種類の型はバリアントによって発癌リスクが異なる可能性があり、さらなる解析が待たれる。 2.持続感染から高齢者の子宮頸癌につながるHPV型の同定 分子系統樹のA9群に属する33、58型は60歳以上の高齢者における感染頻度と子宮頸癌のオッズ比が若年者のそれより高く、高齢者の子宮頸癌に関わっている可能性があった。これらの型は、初期感染が成立した後は、他のHigh Risk型と比べて免疫機構により排除されにくいと考えられ、持続感染から発癌につながっている可能性がある。 3.日本で見られる全HPV型のリスク評価 健常女性の16%に重複感染が見られた。一方、健常女性に単独感染していたHPVの76%はHigh Risk型であった。そのうち、特に多く見られるHigh Risk型は、16、33、35、51、52、33、56、68型であった。これらの型だけで、健常女性の単独感染例の63%を占めていた。また、健常女性に多く見られるLow Risk型は71、90、91型であり、それらは健常女性のHPV単独感染例の12%を占めていた。
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