研究概要 |
<アンドロゲンと卵胞閉鎖について> アンドロゲンによる卵胞のapoptosisのメカニズムはFas/FasLigand/caspase8系によるものである事が判明した。また同時に卵胞閉鎖の過程でおこる細胞外マトリックスのリモデリングのメカニズムとしてmatrix metalloproteiase(MMP)発現の観点から検討した。MMPのうちMT1-MMPの発現が、mRNAレベルならびにタンパクレベルで発現が増強していることから、MT1-MMPによる細胞外マトリックスのリモデリングがアンドロゲンによる卵胞閉鎖のもう一つのメカニズムであることが判明した(Apoptosis,2006)。<インスリン抵抗性と多嚢胞形成、卵胞閉鎖について>adiponectinの生理作用としては、インスリン感受性を増加させる働きは勿論、血管内皮のapoptosisの抑制、複数の癌における抗腫瘍効果など多彩な生理作用が知られている。卵巣局所におけるadiponectinの発現に関する報告はほとんどないため、その生理作用は今までは明らかではなかったが、インスリン抵抗性を合併するZucker(fa/fa)ラットで血中ならびに卵巣局所におけるadiponectinの発現の減少とともに閉鎖卵胞の割合が増加することから考えると、adiponectinは卵巣の卵胞閉鎖に対して抑制的に作用していることが示唆される。これを臨床の場で考えると、卵巣でのadiponectinの発現を増強させるような治療が可能であれば、これは多嚢胞性卵巣症候群の卵胞数の増加あるいは、卵胞閉鎖傾向を改善し、画期的な治療法の開発になる可能性があり、極めて有用な研究成果と考えられる(投稿中)。<tight junctionと卵胞について>血管の透過性に関わる因子として、血管内皮の間をシールするtight junctionタンパク変化の関与が考えられる。ラットOHSSモデルを用いてtight junction関連タンパクであるclaudin-5、occludin、ZO-1についてその発現を検討した。この中で、OHSS処理によりclaudin-5のみ発現がmRNAレベル、タンパクレベルでともに減少していた。またこのOHSS処理によるclaudin-5の減少はGnRH agonistの併用でブロックできる事が判明した。このことからOHSSはVEGF-VEGFR系の発現増強によるclaudin-5の発現減少がおこり血管のシールがゆるみ血管透過性が亢進するために起こるものと推察された。GnRH agonistのOHSS予防効果は臨床上も有用である可能性が示唆された。
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